【現OB会の発足】
約20年前、その頃は組織としてのOB会活動は行われてはおらず、OBと現役との関係はいわば個人対個人といった形で細々と続いているにすぎませんでした。そうした関係を通じ、当時現役部員が連絡先を把握していた数少ないOB達の元に、ある部員から一通の手紙が送られてきました。
その手紙には現役部員数が減少し、資金面でも演奏面でも部活動に支障をきたし始めている事、そしてこのままでは部の存続といった問題にも発展しそうであり、それに対するOBからの支援がどうしても必要となっているといった現状が切々と綴られており、あわせてその中には定期演奏会にOB単独もしくは現役との合同でステージが出来ないだろうか検討して欲しい旨の具体的な要請事項も含まれていました。
手紙を受け取ったOB達は一様にその内容の深刻さに驚き、クラブを思う現役の真剣な思いに強く揺さぶられ、急ぎ会合が開かれる事となりました。現役部員の 減少は彼らだけに責任があるものではない、この様な状態である事を知らないOBも多いはずだなど様々な意見が出され、当面の課題である定期演奏会への対応 を中心議題として熱い議論が交わされました。そして現役からの問いかけに対しては、やはり定期演奏会は現役のものであり、たとえ規模は小さくなろうがOB は出演すべきではないとの結論に達しました。
しかしこのままでは定演開催の為に現役部員へ掛かる負担は大変なものとなる事が予想された為、その事に対する協力の具体策として、OB有志で定演のチケッ トの販売協力を行い、観客動員の協力と資金調達を図る事としました。観客を増やす事で現役のやる気を引出し、今後の部員増への努力へ結び付けたいという狙 いと、集まった資金を現役部員へ渡し、活動資金の援助とする事で現役部員の負担を少しでも減らしたいという思いを込めた協力策でした。ただ現役部員の小数 化はすぐに解消するとは思われず、今後継続した組織的な支援の必要性が訴えられ、OB会を発足し支援体制を急ぎ整える事を望む声があがりました。
ちょうど河鹿創部30周年を翌年に控えていた事もあり、会合に出席したOBが中心になり、その記念行事の開催と、それにあわせてOB会を発足させるべく準 備が始まりました。その中でその年末に開催される定期演奏会の為のチケット販売協力を広くOBに呼びかけた結果、多くの有志の協力を得ることが出来、また 現役部員も努力を重ねた成果として無事、定期演奏会が開催されました。そしてその後何度も会合を重ね、OB名簿の作成や会則の策定、初代会長を初めとする 役員候補の選出など様々な課題をクリアし翌八月、福岡市の「西鉄グランドホテル」で河鹿ギターアンサンブル創立30周年の記念行事とそれにあわせてOB総 会が開催され、現組織でのOB会が承認、発足の運びとなりました。
【初期のOB会活動】
こうしてスタートしたOB会ですが、その発足当初の主な活動はOB会の名簿作りを初めとする組織固めと現役への資金援助でした。ただ、援助をするにもス タート直後のOB会としては余裕資金があるわけではありません。役員会の実働部隊としての事務局のメンバーが中心となって会報を発行し、年間3,000円 の会費の納入を呼びかけ、何とか組織の基盤作りやOB同士の交流をとがんばりましたがその進みは遅々としたものでした。それでも創立35周年の記念行事と 定時総会を「シーホークホテルアンドリゾート(当時)」で、同じく40周年を「ホテルオークラ福岡」でまた45周年は西南学院大学内の「クロスプラザ」で 開催する事が出来たことは大きな成果であったと思います。 その中で現役部員の数は何とか減少には歯止めがかかった様で部の消滅といった最悪の事態は逃れられそうでしたが、部員達の負担増は続いておりOB会として の援助は必要不可欠だったと思います。
そこでしばらくの間、毎年の定期演奏会のチケットの販売協力を続けることとしました。そしてOBの有志によるチケットの買い上げと資金援助はその後10数年にわたり続く事となります。
【OB会活動のジレンマ】
発足総会で一部のOBから、過去の自分達の体験を基にした意見として、OB会は現役に対する圧力組織になる恐れがある。その為、その活動に対しての協力 は消極的にならざるを得ないといった声が出ました。そういった事を踏まえOB会事務局としても活動をする上で現役に対しての働きかけは慎重に運ぶ事を申し 合わせ、資金援助はするがその事は現役側の関係者(幹事・会計・OB係といった役職者)の他にはあえてOB側からは話さず、その使い道に関しても一切口を 挟まない。もちろん現役のクラブ運営や演奏に対しても現役から求められない限りは進んでアドバイスをすることはしないといった形としました。ですからOB 会発足後にOBとなった人達の中にも、自分達が現役の時にはクラブの運営資金の中にOBからの援助が含まれていた事だけでなくOB会の存在やその活動を まったく知らなかった人達も多かったと思います。
しかしその事は後のOB会活動に思わぬ事態を呼びました。新しくOBになった人達でOB会の活動に興味を示す人がほとんどなく、年会費の納入者もその数は 増えなかったのです。やはり現役のうちからOB会の活動に関心を持ってもらう為に、OB会の存在価値や活動に対しての姿勢などをそれなりにアピールする必 要があるように思われました。それまでその自主性を守る為に消極的であった現役との関係を変えなければOB会の裾野はいつまでも広がらないと言うジレンマ に陥ったのです。
【OB会活動方針の転換】
OB会の存続を図るためにはやはり新会員を取り込む必要がある事は明らかです。その為に現役部員達に対して、徐々に接触を深めていく事が45周年の記念 行事を開催すべく準備を始めた頃からOB会の役員会で討議され始めました。そして機会ある毎に現役とOBとの懇親や意見交換の場を求める事としました。そ れまでOBから現役への影響を恐れるあまり、現役から要望を吸い上げる事に対しても消極的だったものを少しずつ積極化する必要を感じたためです。そしてそ の様な場において現役部員達と会話をすることで様々な問題点も浮かび上がり、その結果、より現実に即した現役との関係を構築すべく、OB会からの援助の方 法を見直す事となりました。
OB会の活動が盛り上がりに欠けるのとは反対に現役部員達は徐々にその部員数が増加に転じ、活動も活発さを取り戻しています。定演への来客数も増加に転じ ています。部員増に伴い部費収入も増加に転じ、また活動が充実するにあわせ大学や学文会からの補助金も増え始め、部としての活動資金に余裕が生まれ、現役 部員の資金負担は徐々に減る傾向にあります。その為、OB有志によるチケットの販売協力もその役割を終えたと判断しました。
その反面、部員数が少なく活動資金が乏しかった頃にはほとんど楽器の更新が出来ず、今使っている楽器の多くに老朽化が目立っていますし、演奏者に対し数が 不足している楽器も見受けられます。ただどうしても現役部員の部運営には長期的な視野に立った楽器の更新といった投資計画の策定は難しい為、その部分を OBがサポートする必要も感じられます。そこでこれまでの使用目的を特定しない資金援助をやめ、長期計画に基づく楽器の購入など形に残る支援に切り替えた いと考えています。
部員数の減少は河鹿伝統の演奏技術の継承にも影を落としました。現役部員たちは部の存続を優先するが故に練習時間の削減を選択し、その為にそれまで基礎練 習やパート練習に割いていた時間を減らさざるを得なくなりました。先輩から後輩へと代々続いていた練習方法の引き継ぎすら上手く出来なかった時代もあった らしく、カッティング、ラスギャードやトレモロといった河鹿伝統の技術が失われつつある事を指摘され始めました。リズムパートにいたっては楽器の担当者が 途切れる事もあった為、使い方すら判らなくなった楽器も多く見受けられます。そしてこの事は現役部員達も問題と感じているらしくOB会への要望事項として 対応を求められ始めました。そこで今後はOBによる技術的サポートも現役への支援と考え、技術顧問的な役割を担っていただく役職を第5回総会に於いてOB 会役員に増員するなど前向きに活動を始めております。
【これからのOB会】
一時は部員数の減少により消滅の恐れすらあった河鹿ギターアンサンブルですが創部45周年を迎える頃にはその陣容と活動内容の充実さは大学の文科系クラ ブを代表するまでにその勢いを取り戻してきています。そしてその演奏の質もかつての輝きを再び取り戻しつつあるように感じます。
そうなるにあたってはクラブを取り巻く大学の環境やその他様々な条件が味方した事も事実でしょうが、現役部員達が自分達で考え、練習時間や方法を見直すな ど試行錯誤をくりかえす事により時代の流れを捕まえた事が最大の要因だと考えます。もちろんその影には微力ながらOBからの支援も力になったはずです。グ リークラブやフラウエンコールといった一時は西南学院大学を代表した他の音楽系のサークルの多くで部員がいなくなり休部となった現実を目の当たりにした時 に、河鹿の歴代部員達とOB会の努力を考えると実に感慨深いものがあります。
しかし、その過程で前述のような負の部分も生まれました。ですがその部分はOBが支え、協力をすることで払拭できるものと考えます。逆にOBだからこそ出 来ると言う事も多いように思います。ただ、OBからの思いだけで現役に接するとやはり問題が生じるおそれがあります。幸いな事に45周年の記念行事の準備 の為に現役部員とOBと接触する機会が増え、それをきっかけに双方の距離は近づいているように感じられます。この距離感を大切にし、いかにすれば双方に とってよりよい関係が生まれるかを常に考えながら行動したいと思います。
上記のように現役の活動に余裕が見られ始めたこともあり、今後はOB会としてはそのもう一つの目的であるOB同士の親睦の促進により注力すべきと考えてい ます。まだ公表の段階ではありませんがその為の企画を色々と考え、実行すべく準備を進めております。また既に会報やホームページ等でお知らせしております が、来るべき平成22年には河鹿ギターアンサンブルは創部50周年と言う節目の年を迎える事となります。その際には現役部員と一緒に盛大に祝うべく、OB 会役員一同少しずつ準備を始めております。
こちらの動きに関しても順次皆様にお知らせして参ります。 これまではOB会の活動についてはその手段が限られていたと言う事もあり、あまり積極的に会員の皆様へお伝えする事をしていませんでした。しかし、今後は 河鹿のホームページを使い色々と情報発信をしていきたいと考えております。それに先立ちこれまでのOB会の流れと現在のOB会執行部の考えを改めてお伝え し、今後へ繋げたいと考えこの様な文章を作りました。ぜひお読みいただきご意見やご質問をたくさんお寄せいただきたく思っております。そうする事でOB会 の活動に興味を持っていただければ幸いです。